レポート

「メディカルデザイン|医療介護の未来を拓く」レポート

2012年11月21日

国際シンポジウム
「メディカルデザイン|医療介護の未来を拓く」レポート

フランスのサンテティエンヌ市で開催された「Medical Design」というシンポジウムで、トヨタが開発を進める介護医療向けロボットについて発表させていただく機会を頂いた。カナダ、ドイツ、オランダ、そしてフランスから、PHILIPSのような大手企業、THUASNEという日本ではあまり知られていないが関節用サポータではトップシェアの仏地元メーカのプロダクトデザイナー、そしてデザイン研究者や学生などが集まり、医療関係のデザインについて活発な議論が交わされた。

このシンポジウムの動機となっているのは、各国で高齢化が進み今後ますますヘルスケア製品が重要かつ成長することが期待される一方で、そのデザインがまだまだ発展途上にあり、今後のヘルスケア分野におけるデザインの大幅な進化が、私たちのQOL向上に貢献することを期待してのものだ、と理解をした。

Medical (医療)に関わるデザインのシンポジウムということで、どのような議論が交わされるのか楽しみにしていたが、プロダクトデザインのみならず、製品が使われる医療環境のデザイン、医療診断情報の提示デザインまで、議論は多岐に及んだ。

基調講演2件、一般発表9件の中で、私は唯一のエンジニアであり、私のロボット開発の話は、聴講者にはかなり異色に写ったことだろう。しかし、唯一の日本(唯一のアジア)からの発表に、発表の前後には多くの方から関心や質問を頂き、欧州においても高齢化が進む中、介護ロボットへの関心が高まっていることを窺い知ることができた。また、今後ロボット技術を適用した知能機械が医療現場に入ってくることに向けて、外観上のデザインだけでなく、ヒューマン − マシーン・インターフェイスとしてのデザインが果たす役割が大きくなっていくことを参加者が感じ取ってくれれば幸いである。

また、私自身、このシンポジウムへの参加を通して、エンジニアとして多くのことを学ばせてもらった。多くの発表者が、製品開発のできるだけ早い段階からデザイナーを交えたチームで開発を進めることの重要性を訴えていたことには改めてエンジニアが技術中心に開発を進めるやり方の問題点を認めるところであるし、特に医療分野では、ユーザーも一緒にデザイン開発、製品開発を進めるインクルーシブ・デザインというアプローチについて何名かのデザイナーが言及していた点も興味を引かれた。また、病院や施設の環境デザインについても共感するところが多くあった。

今回の貴重な体験を今後のロボット製品開発に活かしていきたいと考えている。

鴻巣 仁司

 

AUTHOR PROFILE

鴻巣仁司(こうのすひとし)

プロジェクト・マネージャー/エンジニア
パートナーロボットデビジョン
トヨタ自動車

日時2012年11月20日(火)
会場

シテ・ド・デザイン(サンテティエンヌ市・フランス)

主催デザイン都市、サンテティエンヌ
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