レポート

ユネスコ国際会議「持続可能な発展を支える創造性豊かなデザイン」レポート

2014年3月14日

ユネスコ国際会議「持続可能な発展を支える創造性豊かなデザイン」レポート

この国際会議は、深圳市の特別協力によって開催され、ユネスコ・クリエイティブ・シティズ・ネットワークのデザイン都市が参加しました。
会議ではテーマに添って、参加各都市からクリエイターや研究者によるプレゼンテーションと討議が行われました。名古屋からは名古屋芸術大学デザイン学部水内智英講師に「持続可能な未来のためにデザインを再定義する」というテーマでプレゼンテーションをしていただきました。また、セーヌ川左岸の2kmにわたる再開発地域に新たにオープンした「Les Docks Cite de la Mode et du Design」への視察では、使われなくなったドック(船の建造や修理などのための施設)をクリエイティブ産業活性化のハブ施設としてデザインミュージアムやパリコレクション会場、レストランなどに再開発した建築家のレクチャーとともに散策しました。

持続可能な未来のためにデザインを再定義する / 水内智英

パリのユネスコ本部で開催された国際会議「持続可能な発展を支える創造性豊かなデザイン」で、持続可能な未来のためにはデザインそのものの再定義が必要であるという趣旨の発表をさせて頂いた。中国深圳市のサポートのもと開催されたこの会議は、ユネスコ創造都市の各都市から建築、都市計画、交通システム設計、環境技術開発、経済や文化施策の行政担当者ら、様々なアプローチから持続可能社会の実現に対して先進的な試みを行っている者が一同に会する非常に刺激的な場となり、私自身多くを学ぶ機会となった。

デザイナーは消費社会の拡大に伴い経済成長を喚起する専門家としての側面が強調されてきたといえる。環境技術革新が進展した現在なおも気候変動や生物多様性の喪失に歯止めがかからない現状は何を示しているのか。そこではデザイン概念そのものが、変革が求められる文化的枠組みの一部分を成しており、デザインをデザインし直すことによって現状のパラダイムを転換する必要がある。デザインにはより倫理的、文化的側面が必要であり、とりわけサステナブル社会の実現が背景に抱える高度に複雑な問題を扱うためには、食、労働、住居、移動に対して、より包括的、関係的視点からのアプローチが必要である。デザイナーは、持続可能な都市の共創者である市民の活動を支援し、多様なステイクホルダー間をつなぎ、具体像を持って理想的な未来へのヴィジョンを投げかける、ファシリテイターとしての役割を担わなければならない。

この国際会議はユネスコ創造都市が緊密に連携することで、世界の新たな価値の創造源となりうる可能性を示していたように思う。そしてその重要な一角を名古屋市が担っていることは大変貴重なことである。その連携は決して形式的なものではなく、互いに個人的なレベルから信頼関係を築いている担当者間によって支えられていることも特筆しておきたい。現代はローカルな知恵が均質化されることなくグローバルにそしてオープンに繋がっていくことが求められる時代である。今回の貴重な機会を活かし、今後も地球規模の問題に対して真に有効な「創造性」を名古屋から国際的な連携をもって発信することに尽力していきたい。

AUTHOR PROFILE

水内智英

名古屋芸術大学デザイン学部講師

ユネスコ国際会議「持続可能な発展を支える創造性豊かなデザイン」
日時2014年3月3日(日)~4日(金)
会場

ユネスコ本部

主催ユネスコ
共催など

特別協力:深圳市

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